弘文堂編集部です。
いつも本連載をお読みくださり、ありがとうございます。
このたび、西村裕一先生がご執筆を担当されております、『「憲法改正」の比較政治学』刊行が決定いたしました。
『「憲法改正」の比較政治学』
駒村圭吾・待鳥聡史/編著
【内容紹介】
「憲法」とは何か、「改正」とは何か:憲法学と政治学のコラボレーションがひらく「憲法改正」の多様な見方
わが国において「憲法改正」は、長らく重要な政治的テーマとして扱われてきました。しかし、そこでの議論は、「憲法」とそれを「改正」することの本質的な意味を、真に踏まえたものだったでしょうか。
本書は、日本の憲法論議をイデオロギー的・二項対立的状況から解き放ち民主主義の深化に寄与させることをめざして、日本を含む7か国における「憲法改正」の動態と規範的含意を、政治学・国制史学と憲法学との協働により考究。
「基幹的政治制度」などの概念を手がかりにしながら「憲法」とその「改正」とをより広く捉え、成文憲法をもたないにもかかわらず「憲法改正」が語られるイギリスや、憲法改正を「憲法保障」として捉えるイタリア、さらには首都移転が憲法問題とされた韓国など、各国ならではの「憲法改正」の姿を多面的に描き出すことで、単なる改正頻度や改正の容易さ/困難さといった表層的な国際比較とは一線を画する視点を提供します。
また、各部の「概観」においては各国憲法の沿革や改正手続、改正略史などの基本情報もフォロー。今後のわが国における憲法論議に新たな風を吹き込む、今こそ必読の一冊です。
西村先生は、【第Ⅷ部 日本】の「憲法改革・憲法変遷・解釈改憲―日本憲法学説史の観点から」をご担当されております。
【第Ⅷ部 日本】「憲法改革・憲法変遷・解釈改憲―日本憲法学説史の観点から」より抜粋
「憲法改正とは、成典憲法中の条項の修正・削除および追加をなし(狭義の改正)、あるいは、別に条項を設けて、もとの憲法典を増補すること(狭義の増補)によって、憲法に意識的に変改を加える行為をいう」。Ⅷ-序で論じたように、わが国においてこの意味における憲法改正が行われたのは、大日本帝国憲法(以下「明治憲法」という)の改正による日本国憲法の制定という事例しか存在しない。しかし、近代日本の歴史において、それ以外におよそ憲法変動が存在しなかったわけではない。本書のⅧ-1章を執筆した瀧井一博がかつて論じた明治40年の「憲法改革」も、その重要な事例のひとつである。
もっとも、伊藤博文が主導した明治40年の改革を「憲法改革」と呼称するのは瀧井のオリジナルな用法である。それでは、「憲法改革」とは何であろうか。この言葉を広めた大石眞によれば、たとえば「通常の議会制定法である憲法附属法の改廃によって憲法秩序を変えるもの」などと定義されている。ところで、ここにいう「憲法附属法」とは、「国政の組織と運営に必要な規範、すなわち実質的意味の憲法に属する法規範であって、憲法典を補充する意味をもつ規範又はそれを内容とする議会制定法をいう」とされる。したがって、「憲法典の改正(憲法改正)と区別する意味で、実質的意味における憲法又は憲法秩序が変動するさま」をもって、「『憲法改革』の歩み」と説明されることになる。しかしそうであるとすれば、そのような事態を呼称するための用語は、既存の憲法学の中にすでに存在している。すなわち、大石自身も―「一種の」という限定つきではあるが―認めているように、「憲法変遷」がそれである。にもかかわらず、彼がそれとは別に「憲法改革」という用語をあえて選択したのはなぜなのだろうか。
7月1日発売です。詳細は弊社ホームページをご覧くださいませ。
どうぞよろしくお願いいたします。